腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)19 RESIDENT COURSE 解答 【症例 GR 91】

卵巣出血.Ovarian bleeding.






図11〜図13でCT値が測定されている.30HU以上の腹水は血性,60以上は血腫と言われるので,図11の肝周囲の腹水(丸数字1)はM(mean density)=29.8HU,図12の丸数字1は36.4HU,図13の丸数字2は30.8HUで,いずれも血性腹水であり,図12の丸数字3と図13の丸数字1は血腫であり,腹腔内出血を意味する.腹水のCT値は極めて重要な情報となるので,常に計測して欲しいものである.図1〜図10では大量の血性腹水(※)があり,△は血腫で,図4と図5の↑は腫大した卵巣と思われ,妊娠反応が陰性であれば卵巣出血であろう.図9と図10の▲のやや低濃度の部分が膀胱である.婦人科診察でも卵巣出血と診断され,保存的に1週間で症状が消失し,Hbは11.7g/dlから9.7g/dlまで低下した.







参考症例(子宮外妊娠):28歳女性.2日前妊娠中絶のため子宮内掻爬を受けた.12時間前に腹痛が出現し,次第に増強するので来院した.体温:36.8℃,右下腹部に圧痛を認めたが軟.妊娠反応は陽性.図8〜図10は図5〜図7に相当する単純CT.
図8〜図10の単純CTで子宮が認識できなくなる程高濃度の腹水(※)は血性であることを示唆し,さらに高濃度の△は血腫であろう.図4〜図7の造影効果を受ける↑は活動性の出血を意味するextravasation(造影剤の血管外漏出)と解釈すべきであり,子宮外妊娠と診断する.近医の産婦人科で手術となり,約600mlの出血と右卵管妊娠破裂が確認された.










  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ5 【症例 RR 23】
2. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ5 【症例 RE 24】

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