下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 9 RESIDENT COURSE 解答 【症例 LR 41】

尿閉.urinary retention








図1の腹部単純写真で下腹部に円形の,すりガラス状の“pseudotumor sign”(△)は拡張した膀胱または液状内容物で拡張した腸管を示唆する.図4の臍(▲)のレベルまで達する円形の,低濃度の液状物質を含む嚢胞状病変(※)は,他に膀胱らしい臓器を認めないので拡張した膀胱で,尿閉である.図2で両側性の水腎症(↑)があり,図6で水尿管もあり(↑),BUN:75.1mg/dl,creatinine:3.1mg/dlで慢性尿閉であろう.導尿により1,700mlの尿が排出された.









参考症例(Plain CT,尿道結石による急性尿閉):48歳女性.12時間前に下腹部痛が出現し,近医受診,膀胱炎として治療された.処方された内服薬を服用しても腹痛が増強したので救急搬送された.尿意があるが排尿できない.体温:36.8℃,下腹部が膨満し圧痛がある.
図6〜図15の※は,他に膀胱らしき画像を認めないので,拡張した膀胱である.図1〜図3で両側性の水腎症(▲)を示し,両側腎に結石(白矢印)を認める.排尿不能の原因は図16〜図19の外尿道結石(↑)嵌頓である.導尿を試みようとしたら排石した.血清Caが13mmg/dl と高値を示し,原発性副甲状腺機能亢進症と診断され.副甲状腺摘出術が行われた.

















文献考察:尿閉
寺井親則 【臨床研修医のための救急診療マニュアル】 救急患者への対応 症候 尿閉・乏尿・無尿 救急医学27巻10号 Page1406-1409(2003.09)

要旨:尿閉とは下部尿路(膀胱・尿道)の閉塞,すなわち膀胱内に尿が充満しているにもかかわらず,自然排尿が出来ない状態で,乏尿(1日400cc以下)・無尿(1日100cc以下)は腎で尿が産生されていないか,または尿が膀胱まで達していない状態をいう.発症までの経過から急性尿閉と慢性尿閉とに,自然排尿の程度から完全尿閉と不完全尿閉とに分類される.原因疾患は,高齢男性では前立腺肥大症が多い.膀胱疾患では有茎性の膀胱腫瘍や膀胱結石が内尿道口に嵌頓した場合,尿道疾患では凝血塊による尿道閉塞や尿道の瘢痕性狭窄が代表的なものである.

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