腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)17 RESIDENT COURSE 解答 【症例 GR 81】

絞扼性小腸閉塞(壊死).Strangulated obstruction with necrosis






図4で結腸(AC:上行結腸,DC:下行結腸)に拡張はなく,小腸だけの拡張だから小腸閉塞である.外ヘルニアの嵌頓を除外すれば,絞扼性かどうかを判断する.拡張した小腸はgasless(ガスを含まないか,あっても少量)で,図13〜図16で腹水(※)があり,図5〜図8で腸間膜の濃度上昇(▲)を示し,その腸間膜に付着する小腸の絞扼の可能性が高い.図15の1とAから追跡すると,1は図7の29で閉塞するが,実際の閉塞部位はbeak sign(↑)を呈する図9であろう.Aは図11のEで閉塞を示し,図10でbeak sign(白矢印)を示す部位(a)が単純閉塞の小腸の始まりで,図のように上行し図1のkとなる.図8と図9で虚脱した小腸(SB)を認め,closed loopを形成した絞扼性小腸閉塞と診断できる.Closed loopの小腸壁は単純閉塞の小腸壁と同等に造影されているが,虚脱した腸管と比較して明らかに造影効果は低く微妙な所見であるが,壊死の可能性を否定できない.壊死の有無にかかわらずclosed loopと診断されれば手術の適応である.正確にCT診断され手術となった.子宮底部と腸間膜間に索状物(バンドが)形成されており,それにより20cmの回腸が絞扼されclosed loopを形成し壊死に陥っていた(図A).











参考症例(絞扼性小腸閉塞・回腸壊死):60歳女性.過去に虫垂炎,卵巣嚢腫と胆嚢炎で3回の手術歴がある.前日に腹痛と嘔吐が出現し近医受診,当日になっても症状続くため紹介来院した.体温:37.2℃,左下腹部に腹膜刺激症状を認め,腸雑音は低下していた.








↑の小腸群はgaslessで,図5〜図12で大量の腹水(※)があり,図7〜図10で腸間膜の著明な濃度上昇(▲)を示し,絞扼性小腸閉塞の可能性が高い.さらに壁の造影効果は減弱しており,内容液が図1と図2の単純閉塞と思われる口側小腸のそれ(白矢印)と比べて高濃度であることは血性腸液を示唆し,壊死所見である.これだけ壊死所見が明白であればclosed loopを証明する必要はなく,手術の適応である.手術で血性腹水を認め,盲腸から20cmの部位で約100cmの回腸が索状物により絞扼され,closed loopを形成し壊死に陥っていた(図A).









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