文献考察:静脈硬化性大腸炎(phlebosclerotic colitis)
1)Radiology. 2000 Jan;214(1):188-92. Phlebosclerotic colitis: value of radiography in diagnosis--report of three cases.
Yao T, Iwashita A, Hoashi T, Matsui T, Sakurai T, Arima S, Ono H, Schlemper RJ.
Three cases sharing the following radiologic features are reported: (a) abdominal conventional radiography-vascular calcifications at the right hemicolon, (b) abdominal computed tomography-colonic wall thickening and venous calcifications, and (c) barium enema examination-luminal narrowing of the right hemicolon and thumbprinting. There were no clinical or laboratory findings suggestive of portal hypertension. The disease entity, "phlebosclerotic colitis," should be differentiated from ordinary ischemic colitis. PMID: 10644121 要旨:静脈硬化性大腸炎は原因不明の,静脈の石灰化を伴う特殊な虚血性大腸炎であり,3例のX線学的特徴は,1)腹部単純写真:右側結腸の走行に一致して糸状の石灰化像,2)CT所見:右側結腸の壁肥厚と腸間膜側に多発する石灰化像,3)注腸造影:右側結腸の管腔狭小化,ハウストラの消失,辺縁の不整・硬化像,拇指圧痕像.
2)若年発症のphlebosclerotic colitis(静脈硬化性大腸炎)の1例
Author:川端英博(新潟労災病院 消化器内科), 高瀬郁夫, 村田陽稔, 渡辺卓也, 味岡洋一, 渡辺英伸
Source:胃と腸(0536-2180)38巻10号 Page1468-1476(2003.09)
Abstract:28歳男.嘔吐,右側腹部痛,下痢,体重減少を主訴とした.2ヵ月にわたって右側腹部の鈍痛,持続性下痢が出現し,症状悪化により入院した.腹部単純X線写真では上行結腸の短軸方向に走る線状の石灰化像を認め,注腸造影では上行結腸から横行結腸までの腸管壁の硬化と狭小化,拇指圧痕像がみられた.大腸内視鏡検査では横行結腸中央部の狭窄部位に輪状傾向のある浅い潰瘍が散在し,粘膜色調は暗青色であり,腹部CTでは上行結腸から横行結腸までの腸管壁に全周性肥厚,上行結腸壁内に線状の石灰化像を認めた.また,生検標本の病理組織所見では粘膜内小血管および粘膜下層静脈の周囲に高度の膠原線維沈着を,粘膜下層に高度の線維性肥厚を伴う静脈の蛇行像と近傍の小動脈の線維性肥厚を認めた.phlebosclerotic colitisと診断し,中心静脈栄養治療を行ったところ,症状は改善し,病変の進展や管腔の変化は認めなかった. 本邦集計例39例(表)の要旨:年令は28〜80歳(平均:61.2)で50歳以上が87.2%を占め,男女比は1:1.4,症状は通常の虚血性大腸炎の3大症状といわれる腹痛:69.4%,下痢:25%,下血は8.3%で,また嘔吐は36.1%.病変範囲は盲腸から横行結腸:62.2%,盲腸から下行結腸:18.9%,盲腸から上行結腸:5.4%.盲腸からS状結腸:5.4%,回腸末端から横行結腸:5.4%,回腸末端から下行結腸:2.7%であった.4例においては右側結腸で発症し6ヶ月から2年後には下行結腸まで罹患範囲が拡大した.2週間から6年と慢性的な下痢,腹痛と嘔吐で経過する症例が多い.腹部単純写真で右側結腸の走行に一致して石灰化像を90.3%に認め,注腸造影所見では,拇指圧痕像:56.7%,腸管壁の硬化:53.3%,管腔の狭小化:40%,ハウストラの消失:23.3%,壁の不整:16.7%.大腸内視鏡検査所見は,右側結腸を中心に血管透見像が消失し,光沢のない,暗青色,青銅色などの粘膜所見が79.3%に見られた.55.3%に手術が施行されている.
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