図2の△は輪郭(辺縁)がシャープだから遊離ガスであるが,図3の白矢印は輪郭が鈍で脂肪組織であり,その違いは拡大画像で明白になる.図7〜図9の△も遊離ガスである.腹腔内遊離ガスの90%は消化管穿孔が原因であるが,腹水を伴えば消化管穿孔の可能性はさらに高くなる.図2と図3で少量の腹水(※)を認め,胃と十二指腸を検索してみる.胃壁は急性病変を示唆する粘膜下浮腫による壁肥厚を示さないので,十二指腸に注目する.胃の前庭部(A)は図14から上行し,図8と図9で総胆管が示されているので,図7〜図9は十二指腸球部(Du)を描出していることになる.前壁に粘膜下浮腫による壁肥厚(▲)を認め,図8と図9の↑が急性潰瘍性病変であり,十二指腸潰瘍穿孔と診断する.図Aのガストログラフィン造影で変形した十二指腸球部を示しているが造影剤の腹腔内への漏出はないので保存的に治療し,成功した.6日後の上部内視鏡検査で十二指腸球部前壁にA1の,後壁にH1潰瘍を認めた.
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