文献考察:骨盤放線菌症
1)藤井進也, 鎌田憲子, 仙田哲朗, 横山佳明, 阿部克己, 宮腰朝子, 荻野隆一, 小川敏英. 骨盤内放線菌症の2例 臨床放射線46巻12号 Page1542-1546(2001.11)
2)Lee IJ, Ha HK, Park CM, Kim JK, Kim JH, Kim TK, Kim JC, Cho KS, Auh YH. Abdominopelvic actinomycosis involving the gastrointestinal tract: CT features. Radiology. 2001 Jul;220(1):76-80.
要旨:放線菌症actinomycosisは嫌気性の無胞子グラム陰性桿菌であるactinomyces israelii を主とした放線菌属によって引き起こされる慢性の化膿性及び肉芽腫性疾患で,膿瘍や線維性組織を形成しながら周囲組織に浸潤する感染症で,瘻孔を通じて排出される膿中には特有なイオウ顆粒sulfur granuleをみる.放線菌は健康人の口腔内,大腸内と女性下部生殖器に常在し,粘膜防御機構が損傷された時に発症する日和見感染である.病巣部位は順に顔面頚部,胸部,腹部とされ 骨盤内はまれとされてきたが,近年,骨盤放線菌症pelvic actinomycosisが若年女性の,子宮内避妊器具(IUD:intrauterine device)の長期留置者に下部生殖器感染から上行性に卵管,卵巣炎を生じ発症することが判明してきた.自ら産生する蛋白分解酵素の働きにより腹膜や筋膜を破壊し浸潤性に発育進展する特徴があり,S状結腸や直腸を浸潤し,悪性腫瘍との鑑別が困難なことも多い.骨盤放線菌症のCT所見は,1.嚢胞性または実質性,あるいは混合性の,よく造影される炎症性腫瘤で,腹膜や筋膜を超えて進展する.2.隣接する腸管は平均長さ8.3cm,厚さ1.2cmの壁肥厚を呈する.治療法はペニシリンの大量投与である.
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