文献考察:Peutz-Jeghers症候群
1)【小児の症候群】 消化管 Peutz-Jeghers症候群
Author:名木田章(井原市民病院), 青木理香
Source:小児科診療(0386-9806)64巻増刊 Page223(2001.04) 要旨:Peutz-Jeghers症候群(PJS)は常染色体優性遺伝する疾患で, 皮膚と粘膜の色素沈着を伴った腸管過誤腫性ポリポーシスである. 腸管外にも過誤腫が認められ, それらに易発癌性がみられている. 発生頻度は12万人に一人とされ,家族例と散発例の報告がそれぞれ半数ずつ見られる.径1-5mmの小色素斑が口, 眼, 鼻孔, 肛門周囲, 指, 爪先に認められる. まれながら直腸粘膜, 背中, 手掌, 足底にもみられる. これらの色素沈着は加齢とともに消失していくことが多いが, 頬粘膜のそれは持続的に残存するのが特徴である. ポリポーシスに起因する症状は反復性腸重積による腹痛と消化管出血である. ポリープは空賜, 回腸, 十二指腸, 大腸, 胃の順に発生する. 小腸と大腸のポリープは有茎性になる傾向があり, 胃のそれは無茎性である. 加齢とともに新しいポリープの発生は減る. 治療の原則はポリープと悪性腫瘍をすべて切除することである. そのためには1-2年ごとの検診と上部消化管造影検査が必須である. 小腸に1.5cm以上のポリープがあった患者では開腹下に内視鏡検査をすべきである. 小さいポリープは内視鏡的に電気焼却して除去し, 大きいのは外科的に腸切除する.
2) 【小児消化管ポリープの病態と治療】 Peutz-Jeghers症候群の病態と治療
Author:大浜用克(神奈川県立こども医療センター), 山本弘, 新開真人, 西寿治, 武浩志, 福里吉充, 村上徹, 檜顕成
Source:小児外科(0385-6313)33巻7号 Page765-769(2001.07)
Abstract:12例のPeutz-Jeghers症候群(PJS)を検討した. 12例中11例に21回の治療が行われ, うち11回は緊急手術(腸切除6例)であった. 手術時期は6〜15歳に多く, 腹痛を有するこの年代の患児では予防的ポリープ摘除の適応である. 自験例の1例は38歳時に十二指腸癌が発生し, 7ヵ月の経過で死亡した. PJSでは消化管内外の癌発生が高率であり, 中には小児期の発生の報告もあるので, 癌発生を考慮したサーベイランス,フォローアップが必要である. 追記:消化管のhamartomatous polypが特異的臨床像である.86%に腸重積を起こし,下血が81%に認められる.癌発生の危険度が高く,通常の9〜18倍といわれる.最も多い癌は結腸癌と乳癌であり,発生時期は比較的若い.
PJSの患者は消化管のポリープと乳癌, 卵巣癌や子宮癌をスクリーニングすべきで, 以下のようなプロトコールが提唱されている.(1) 10歳(必要に応じて10歳以下で)からは2年ごとに胃十二指腸内視鏡検査を行う.そして1mm以上の大きさのポリープはすべて摘除すべきである.(2)まめに患者の病歴と照合しながら25歳以上から3年ごとに結腸内視鏡検査を行い1mm以上の全ポリープは摘除する.(3)小腸のスクリーニングは10歳(もちろん必要に応じてそれ以下でも)から始める.小腸のスクリーニングには特殊な問題がある.標準的には2年ごとの造影検査が示唆されるが, この間隔については放射線被曝の問題を最小限にするために臨床歴に合わせて延長してもよい.(4)25歳からは乳癌の監視が必要で, 35歳からは毎年マンモグラフィーをとる.(5)25歳からは同時に腹部, 骨盤内臓器(卵巣,子宮癌)の超音波検査を毎年行う.(6)通常の検査の一部としての子宮頚管スメア検査を2年ごとに受けさせる.PJSではいろいろな癌が発生するのでサーベイランス・プロトコールを徹底させづらい点が問題である.
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