文献考察:月夜茸中毒
1)月夜茸(毒キノコ)中毒による腸炎の1例 CT所見と病変の分布
Author:山浦秀和(愛知県がんセンター 放射線診断部), 河村泰孝, 伊藤春海, 栗山とよ子, 山本誠
Source:臨床放射線(0009-9252)48巻7号 Page879-881(2003.07)
Abstract:42歳男性で, 野生キノコ摂食後に嘔吐, 下痢が出現し, 近医で点滴投与を受けたが, 2日後に再び嘔吐・下痢が出現し, 著者らの施設へ入院となった. 所見では, 内視鏡検査で十二指腸球部から下行部にかけて出血しており, びらんを伴う強い炎症性粘膜浮腫が認められた. また, CTでは十二指腸と近位空腸のみに著明な壁肥厚が確認された. 以上より, 毒キノコ(月夜茸)による腸炎と診断し, 抗潰瘍薬等の内科的治療を行ったところ, 症状の改善を認め, 約10日後に退院した.
2)医薬品情報21(www.drugsinfo.jp/contents/data/ta/datu1.html - 9k -)
2文献のまとめ:月夜茸(Lampteromyces japonicus)は食用のヒラタケ, シイタケと形態が類似し, よくそれらと共生していることから誤って摂食されやすい代表的な毒キノコである.月夜茸中毒は, 摂食後30分から3時間後に突然の嘔吐,下痢と腹痛で始まり, コレラ様の白色水様便(まれに血便)が出現する.成分のイルジンの消化管出血性炎症惹起作用によるものといわれるが,死亡例は希である.キノコの摂取歴が明らかであれば診断は容易だが, 食物摂取後の消化器症状を訴える患者の場合, アニサキス症や大腸菌, サルモネラ菌, カンピロバクタ-などによる感染性腸炎が鑑別すべき疾患である.画像的には, アニサキス症は小腸の場合, 遠位回腸を好発とする20cm前後の比較的限局した壁肥厚が認められ, その口側はイレウス様に拡張する.大腸菌, サルモネラ菌, カンピロバクタ-などによる感染性腸炎は, 主に右半結腸をおかし比較的広範な大腸の壁肥厚が生じるとされる.
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