腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)14 RESIDENT COURSE 解答 【症例 GR 66】

臍ヘルニア嵌頓.Incarcerated umbilical hernia








図6〜図9の↑は画像上明らかな臍ヘルニアである.しかし,皮下脂肪が厚いとヘルニアの膨隆が目立たず(図8と図9:▲が皮膚),腹部所見で診断つかないこともある.Expertを目指すなら,その臍ヘルニアが小腸拡張の原因であることを確認すべきである.図7でヘルニア直下に虚脱した小腸(SB)と閉塞部位(白矢印)を認め,1から数字順に拡張した小腸が展開するのでヘルニア嵌頓が小腸閉塞の原因である.嵌頓した小腸の壁は良好な造影効果を示し壊死はないと判断する.手術で同所見が確認された.嵌頓した小腸は変色し虚血所見を呈していた(図A:△)が,温めているうちに血流が改善し切除は不要であった.









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文献考察:成人臍ヘルニア
成人臍ヘルニア嵌頓の3例
  Author:大平真裕(中国労災病院 外科), 佐々木翠, 先本秀人, 小出圭, 江藤高陽, 高橋信
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)65巻7号 Page1974-1979(2004.07)
  Abstract:成人臍ヘルニアは適切な治療を行わないと重大な合併症を引き起こす危険性が高い. 嵌頓をきたした臍ヘルニアの3症例を若干の文献的考察とともに報告する. 症例1は63歳, 女性. 高度肥満で腸閉塞のため脱水もあり術翌日に肺梗塞にて死亡. 症例2は46歳, 女性. 腸壊死のため腸切除を要した. 症例3は61歳, 女性. 肝硬変・コントロール不能な腹水のため術後再発をきたした. 本邦24例と当院9例の33症例(表)で検討を行ったところ, 高度肥満が12例(36.4%)で肝硬変・腹水が10例(30.3%)であった. 術式は29例(87.9%)が単純閉鎖, 4例(12.1%)がメッシュを使用, 腸切除は11例(33.3%)であった. 成人臍ヘルニアの成因は腹水貯留や多産, 高度肥満などによる腹圧上昇が考えられる. 高度肥満群では腸切除率や術後合併症率が高く, 術中術後管理に十分な注意が必要であると考えられる.

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