文献考察1):薬剤性腸炎
【薬剤性腸炎 最近の話題】 薬剤性腸炎の起因薬剤と病態・発生機序
Author:斉藤裕輔(旭川医科大学 第3内科), 渡二郎, 藤谷幹浩, 太田智之, 前本篤男, 藤谷佳織, 春山恭子, 谷口雅人, 蘆田知史, 小原剛, 高後裕
Source:胃と腸(0536-2180)35巻9号 Page1117-1124(2000.08) 要旨:薬剤性腸炎として偽膜性腸炎(PMC:psudomembranous colitis)と急性出血性腸炎(AHC:acute hemorrhagic colitis)がよく知られている. PMCは複数の抗生物質を使用している高齢者に発生し, 遠位大腸に偽膜の形成を特徴とする院内感染症で, Clostridium difficile(Cd)の異常増殖が原因とされる.病気の発生にはCd toxin A, Bの2種類が関与している. AHCはpenicillin製剤の投与により発生する近位大腸に好発する腸炎で原因は不明であるが, アレルギー説やShwartzman反応が原因として考えられている. 一方, NSAIDsの使用の増加に伴い, 近年, NSAIDs腸炎の報告が増加している.小腸・大腸の潰瘍形成, 潰瘍性大腸炎やCrohn病の増悪, 憩室からの出血・穿孔のほか, 小腸に多発する膜様狭窄を生じることも知られている. 腸管障害の発生機序としてNSAIDsによる腸管粘膜の透過性亢進により, 胆汁, 腸内細菌, 他の化学物質が細胞内に侵入し, 出血や潰瘍を生じることが原因として推測されている.薬剤の減量, プロドラッグの投与の他, sulfasalazineやmetronidazoleが治療として有効である.
文献考察2):抗生物質起因性腸炎
【薬剤性腸炎 最近の話題】 抗生物質起因性腸炎の臨床像と鑑別診断(解説/特集)
Author:林繁和(名古屋掖済会病院), 神部隆吉, 家田秀明, 西尾浩志, 竹田泰史
Source:胃と腸(0536-2180)35巻9号 Page1125-1134(2000.08) 要旨:抗生物質起因性腸炎は偽膜型と非偽膜型に分類される. 偽膜性大腸炎は重篤な疾患を有する高齢者に好発し, 血便・腹痛はやや少なく,セフェム系・注射・多剤投与, C. difficile毒素陽性例が多い. 非偽膜型は4型に分類され,I(びまん出血)型は若年者に好発, 血性下痢・腹痛が高率, 原因疾患は感冒が多く, 合成ペニシリン・内服・単剤投与が多い.II(縦走潰瘍)型はセフェム系投与が多い以外は型に類似, III(アフタ)型は年齢, 症状, 抗生物質の種類・投与経路, 好発部位, C. difficile毒素陽性例の存在など偽膜性大腸炎に類似, IV(非特異)型は様々な病態のものが含まれ特徴的なものはない. 鑑別診断は抗生物質投与の有無, 便細菌学的所見が重要であるが,内視鏡的には偽膜性大腸炎では潰瘍性大腸炎, クラミジア直腸炎, アメーバ赤痢, びまん出血型,縦走潰瘍型では虚血性大腸炎や腸管出血性大腸菌0-157による腸炎, アフタ型や非特異型では各種感染性腸炎と鑑別を要する.
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