下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 18 RESIDENT COURSE 解答 【症例 LR 89】

左卵巣嚢腫捻転.Torsion of left ovarian cyst








図1〜図14の球形嚢胞性病変(↑)は,女性で下腹部にあれば卵巣嚢腫の可能性が極めて高い.果たして急性腹痛の原因病変か? 1)一部の壁の造影効果が見られない,2)図14でdensityが測定されているが,嚢胞性病変(丸数字2)は38.3HUと高濃度を示し,血性内容物の可能性がある,3)図12〜図16の腹水(※)はdensityが23.4HUで,血性(30HU以上)ではないが,通常の汚染されていない腹水(density10HU以下)としては高く淡血性であろう,4)図10と図11で白矢印は腫大した卵管であろう,以上の4所見から卵巣嚢腫の捻転と診断する.図3〜図9の▲と,図12〜図14の△も嚢胞性病変で,多房性である.図3の右腎の白矢印は水腎症を示しているのではない.腎盂が造影されており,腎実質の造影効果に左右差がないから嚢胞である.手術で血性腹水と壊死に陥った左卵巣嚢腫を認め(図A),反時計方向に720度捻転していた.病理:serous cystadenofibroma.









参考症例(右卵巣茎捻転):85歳女性.2日前からの,徐々に増強する下腹部痛のため来院.体温:37.1℃,下腹部に大きな腫瘤を触知し,その頭側に圧痛と反跳痛を認めた.図5P〜図8Pは単純CT.
図1〜図11の腫瘤(↑)は,一見不整に造影され,悪性腫瘍を疑いたくなるが,図5P〜図8Pの単純CTで高濃度を示しており,血腫を含む腫瘤の可能性がある.図1〜図5で盲腸(C)と一部小腸が液状内容物とガスで拡張しているのは麻痺性イレウスを示唆し,腫瘤(↑)の壁の造影効果を認めず,図9〜図12で腹水(※)があり,腫瘍の捻転を疑う.手術および病理所見:右卵巣の茎捻転による,血腫を含む壊死に陥った卵巣(図A:術中写真).

















  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ19 【症例 RR 93】
2. 下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 8 【症例 LR 38】

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