臍（図１と図２の▲）直下から始まり，図９の膀胱に連続する病変（↑）は，低濃度の内容物（膿）を含み，壁は造影効果を受け膿瘍であり，すなわち遺残尿膜管膿瘍であるが，膀胱に連続するので尿膜管開存（patent urachus）の膿瘍である（参考症例の解説）．図１０〜図１３の△は直腸に充満した固形便．

参考症例 １（遺残尿膜管膿瘍・尿膜管洞 urachal sinus）：下腹部痛と発熱で来院した21歳女性．瘻管が膀胱とは連絡せず，臍部にのみ開口する尿膜管洞の感染・膿瘍形成（↑）．膿瘍は図８で閉塞し膀胱とは連絡しない．△は臍部の膿瘍．

参考症例 ２（遺残尿膜管膿瘍・尿膜管性膀胱憩室 urachal diverticulum）：13歳男児．前日からの下腹部痛と発熱のため来院した．↑が遺残尿膜管膿瘍であるが，瘻管が臍部とは連絡せず，膀胱に開口する膀胱憩室型．

参考症例 ３（先天性尿膜管開存．congenital urachal cyst）：65歳男性，小児期から排尿を我慢すると臍から少量の尿が出ることがあった．2日前からの下腹部痛，発熱と残尿感のため来院．体温：37.5℃，下腹部に圧痛がある．
白矢印が臍部，そこから膀胱まで連続する開存した尿膜管（↑）．途中でcyst内に結石（▲）を認める．臍瘻からの造影剤注入（図A）
で開存している全尿膜管，結石（△）周辺のcystと膀胱が造影された．全尿膜管と膀胱の一部を切除した．

文献考察：遺残尿膜管（図）
Semin Pediatr Surg. 1996 May;5(2):107-15.
Urachal remnants.
Suita S, Nagasaki A.

Although urachal remnants rarely are observed clinically, they often give rise to a number of problems such as fatal infection and late malignant changes. Therefore, a total assessment of the disease with a particular focus on embryology, anatomy, and clinical symptoms, as well as the most advisable treatment, is called for. The authors report on 33 previously experienced cases and discuss the problems involved in both the diagnosis and treatment of these anomalies. PMID: 9138709
要旨：遺残尿膜管は先天性（48％）と後天性（52％）に分けられる．先天性（先天性尿膜管開存congenital urachal cyst：図のA）は，臍部と膀胱が開存した尿膜管で連続しており臍部から尿が漏れ出る．後天性は閉塞した尿膜管が膀胱内圧上昇や感染により部分的に開通するもの．後天性は4つに分類される．１）尿膜管洞（urachal sinus：図のB）：尿膜管嚢胞が感染し臍部へ再開通したもの．２）尿膜管性膀胱憩室（urachal diverticulum：図のC）：尿膜管洞とは逆に膀胱へ再開通したもの．３）尿膜管嚢胞（urachal cyst：図のD）：臍部と膀胱の中間で開存したままの尿膜管で，臍部とも膀胱とも開通しない．４）alternating sinus（図のE）：尿膜管嚢胞が臍部へ開通したり，時には膀胱へ開通したりするもの．