文献考察:脾臓性腺癒合(splenic-gonadal fusion),129例の集計
小顎症を伴ったSplenic-Gonadal Fusionの1例
Author:藤田潔(香川医科大学 泌尿器科), 空本慎慈, 竹中生昌, 他
Source:西日本泌尿器科(0029-0726)56巻10号 Page1219-1223(1994.10)
要旨:脾臓性腺癒合(splenic-gonadal fusion)は,正常解剖では大きく位置が異なっている脾臓と性腺が癒合するまれな奇形である.2つに分類される. 1)連続型:本来の位置にある固有の脾臓が性腺と索状物で連続しているもので57%を占め,2)非連続型:固有の脾臓ではなく副脾が性腺と癒合しているものが43%で,連続型がやや多い.
胎生第5週に中胃の背側に発生した脾臓原基が,腸の回転により性腺原基と近接し,性腺の下降し始める第8週頃までに何らかの原因で癒合し,その後性腺が下降して奇形が起こるといわれる.世界の集計129例の検討:脾臓の位置からして当然左側に多いが,右側例が3例ある.男女比は120:9で圧倒的に男性に多い.特異的な合併症は,腹腔内にある性腺が下降するためヘルニア,性腺の下行障害(20%,特に停留精巣)が多く,ほかに小顎症,奇肢症(四肢の欠損),その他の骨格異常 (上記症例では先天性股関節脱臼)などがある.臨床的には陰嚢内にて癒合した脾臓=陰嚢内腫瘤,ヘルニア,手術で偶然に,停留精巣などで発見される場合が多い.本疾患を知らないと偶然異常を発見しても診断はつかない.
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