下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 15 EXPERT COURSE 解答 【症例 LE 73】

変性子宮筋腫.Rupture of degenerated uterine leiomyomata








大量の腹水と,巨大な,内部構造が極めて不整な下腹部腫瘤は悪性腫瘍の破裂を疑うが,図14〜図16で腫大した子宮と連続しているので変性子宮筋腫も鑑別診断の一つに入れるべきである.穿刺で血性腹水を認め,卵巣腫瘍破裂の診断で手術となったが,変性子宮筋腫の破裂であった(図A).












参考症例(変性子宮筋腫):43歳女性.前日からの,次第に増強する下腹部痛のため来院した.体温:36.8℃,下腹部に圧痛と筋性防御を認めた.
手術と病理検査で,↑は変性子宮筋腫と診断された.















文献考察:変性子宮筋腫
【産婦人科救急疾患とその実践的対応】 婦人科領域における救急疾患の各論 実際の画像所見と対処法を中心として 子宮筋腫と子宮悪性腫瘍
  Author:北正人(京都大学 婦人科産科), 藤井信吾
  Source:救急医学(0385-8162)24巻1号 Page67-71(2000.01)
子宮筋腫の変性・感染:子宮筋腫に変性が起こることはよくみられるが, とくに赤色変性では疼痛が強い.赤色変性とは筋腫血管の血栓形成とその破綻の結果, 血液が筋腫組織に浸潤するために起こる変性で, 割面が暗赤色を呈することを特徴とする.この変性は妊娠中に起こることが多い.症状としては突然に発生する筋腫領域の疼痛, 圧痛がある.時には悪心嘔吐を伴う.治療は鎮痛剤の投与を行う.通常はこれで疼痛は徐々に改善するものであるが, 強度の疼痛が持続する場合は核出術を考慮する必要がある.また, このような筋腫には感染が起きることがある.感染経路は主として内膜からの感染によるものであり, 粘膜下筋腫に起こることが多い.とくに産褥期に子宮内膜炎より感染が波及して起こることが多く, まれには敗血症に至ることがある.まず抗生物質による治療を行うが, 改善しないようなら開腹手術が必要である.
  【参照症例】   1. 下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 8 【症例 LE 37】

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