心房細動のある患者が腹痛を訴えれば,まず注目すべきは上腸間膜動脈(SMA: Superior Mesenteric Artery)の塞栓症である.SMAを図4から追跡すると,図9で造影されなくなり(↑),塞栓症である.そこで止まらないで腸管の虚血状態を検証することも大事である.SMA塞栓症で壊死に陥る頻度が高い腸管は右側結腸(A:上行結腸,C:盲腸),回腸と空腸肛門側であるが,図18までの腸管壁の造影効果は,図7〜図9の,壊死に陥る頻度が最も低い上部空腸(J)と比べて減弱していない,すなわち側副路のspasmが軽度であるために血流が保たれていることを示唆する.Du:十二指腸,SMV( Superior Mesenteric Vein):上腸間膜静脈,IMA(Inferior Mesenteric Artery):下腸間膜動脈,TI:回腸末端.図Aの血管造影でSMAの閉塞(白矢印)が示されているが,側副路からileocolic artery(▲)が造影され上記所見を裏付ける.カテをSMAに挿入したまま塩酸パパベリンとプロスタグランジンAを動注しながら手術となった.手術でも腸管虚血所見を認めず,血栓除去のみを行った.翌日の血管造影(図B)で閉塞(白矢印)があり血栓が残存しているが,right colic artery(△)が開存し, ileocolic artery(▲)も側副路からの良好な血流を示している.その後は順調に経過した.
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