下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 7 EXPERT COURSE 解答 【症例 LE 33】

S状結腸捻転(壊死).sigmoid volvulus with necrosis








図1の腹部単純レントゲンはcoffee bean signを呈している(↑).図2のA1が拡張した腸管の頂点と思われ,図3のBと2から追跡すると,図11のJでbeak signを呈し(▲),図14のMで閉塞し,他方は図7の34でbeak signを呈し(▲),図6の35で閉塞する.図2の下行結腸D1は図7のD6でbeak signを呈し(▲)34と連結し,図8のD7で閉塞する.図22の直腸R1は図11のR12でJのbeak sign(▲)と連結し消失する.従ってA〜Mと1〜35はclosed loopを形成しており,下行結腸と,虚脱した直腸は図7〜図11に収束するのでS状結腸捻転である.大腸ファイバーによる整復は成功せず手術となったが,図18〜図20の△は壁内気腫であり,高度の虚血または壊死の可能性を示唆する所見であり,手術の適応である(著者私見).手術で,捻転により壊死に陥ったS状結腸を切除した(図A).















文献考察:S状結腸捻転症
1)飯合恒夫,岡本春彦, 須田武保, 畠山勝義.【消化器外科疾患 診断と治療のフローチャート】 S状結腸捻転症 外科 62巻12号 Page1460-1462(2000.11)
2)Madiba TE, Thomson SR. The management of sigmoid volvulus. J R Coll Surg Edinb. 2000 Apr;45(2):74-80.
3)Grossmann EM, Longo WE, Stratton MD, Virgo KS, Johnson FE. Sigmoid volvulus in Department of Veterans Affairs Medical Centers. Dis Colon Rectum. 2000 Mar;43(3):414-8
 
要旨:消化管が腸間膜の長軸方向に捻れて起こる疾患を捻転症という.本症の発生には,1.腸管にたるんだ分節があり腹腔内を自由に動くこと,2.その分節を固定している点が接近しており,それを中心として捻転が発生しうるという2つの因子が関与する.S状結腸は係蹄がたるんでおり,固定点も接近しており好発部位である.誘因としてはS状結腸過長症,腸回転異常,手術によるS状結腸間膜の瘢痕短縮などの器質的なものと,長期臥床,慢性便秘,抗コリン作用薬剤の投与,低カリウム血症などの機能的な因子がある.S状結腸捻転症は高齢者と精神・神経疾患を有する者に多く発症する.手術適応:1)腹膜刺激症状,2)血便,3)ショック,4)遊離ガス,5)内視鏡的に整復不成功例.6番目に“捻転を起こしたS状結腸の壁内気腫”を追加したい.

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