文献考察:食餌性イレウスの診断と治療方針
【イレウス】 その他のイレウス 腸管内異物によるイレウス 食餌性イレウス・胆石イレウス
Author:高見元敞(豊中市立豊中病院), 島野高志, 北田昌之, 塚原康生, 柴田高, 新居延高宏, 福島幸男, 藤田淳也, 池田公正, 林田博人
Source:救急医学(0385-8162)24巻7号 Page841-844(2000.07) 要旨:日常われわれが摂取する食物が原因となって発生するイレウスを, 食餌性イレウス(intestinal obstruction due to food boli)と称する. 誘因となる食餌の種類は種々雑多で, 日本では, こんにゃく類, こんぶ, わかめ, しいたけ, 柿胃石など消化の悪いものが目立つ. 閉塞部位は大部分が回腸で, 過去にBillroth II法の胃切除術を受けていることが多い. Billroth II法の術後は, 消化の悪い食物塊が広い吻合口を通って, 一挙に小腸内に移動し, 内腔の狭い回腸下部で腸管を閉塞するものと考えられる. 胃切除後の患者が糸こんにゃくやラーメンなどを, ほとんど咀嚼せずにあわてて食べた場合, 消化管を通過するうちに膨化して一塊となり, 腸管の完全閉塞を起こすのであろう. また過去に開腹術の既往がある場合は, 腸管が癒着し, それが食餌性イレウスの誘因となる.これまで, 術後の癒着性イレウスとして保存的に治療されてきた腸閉塞症の中には食餌性イレウスと考えてよい症例が含まれている可能性がある. 食餌性イレウスの臨床症状の多くは腹痛と嘔吐であり, 通常のイレウスと何ら変わるところはないが, 既往歴や, 発症する前の食餌の摂取状況を詳しく聴くことが, 診断の糸口になる. 治療に当たっては, できるだけ保存的療法に努め, やむをえず開腹術を行った場合でも, まず腸内容を用手的に結腸まで誘導する(milking)ことも試みるべきである.腸切開を行う必要がある場合, 切開はできるだけ閉塞部位を避け, それより近位側の浮腫を生じていない腸管を選ぶべきである.
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